研究概要

動物の寿命や老化がどのように決まっているのか、長い間不明でしたが、近年のモデル生物を用いた解析から、寿命や老化は明確に制御されたプロセスであることが分かってきました。今日までに動物の寿命を延ばし、老化を抑制するいくつかの、分子メカニズム、いわゆる寿命延長経路 (インシュリン/IGF-1シグナルの抑制、カロリー制限、生殖細胞の除去、ミトコンドリア機能抑制など)が同定されていますが、興味深いことにこれら全ての経路で共通して、細胞内分解システムとして知られる「オートファジー・リソソーム分解系」が活性化しており、このことが寿命延長に必須であることが分かってきました(図1)。一方、オートファジー・リソソーム分解系の活性は加齢と共に低下し、これが寿命の短縮や様々な加齢性疾患の要因になることも示されています。これらのことから、オートファジー・リソソーム分解系の活性調節が寿命や老化制御の鍵を握っていると考えられますが、この制御機構や役割、また、なぜ加齢にともない機能低下するのか、など本質的な問題の多くが未解決のままです。私たちはこれら多くの謎を明らかにすべく、哺乳類培養細胞、酵母、線虫、マウスなどのモデルを駆使して研究を進めています(図2)。現在は以下のテーマに関連した研究を進めています。

  1. オートファジー・リソソーム分解系による寿命延長、老化抑制機構
  2. リソソーム恒常性維持の分子機構とその加齢変容、神経変性疾患との関連
  3. オートファジーによるがんの制御メカニズム
  4. 動物の休眠と寿命制御をつなぐ共通分子機構
  5. 生殖と寿命のトレードオフを担う分子機構

最近の代表的な論文