教室沿革・これまでの研究

教室の歴史

当研究室は1947年(昭和22年)5月奈良医学専門学校生化学講座として、初代教授に伊藤 登先生を迎えて開設されました。1973年(昭和48年)9月には第2代教授として神谷知弥先生が着任され、奈良県立医科大学中央RI実験施設の整備に尽力されました。1974年(昭和49年)4月、留学先のアメリカより吉原紘一朗先生が帰国され研究の体制が整い、ポリADPリボシル化反応、ポリADPR合成酵素の特異的な性質が当教室においてはじめて明らかにされました。1996年(平成8年)5月、吉原先生が第3代教授に昇任されました。細胞培養室の整備やDNA関係の設備も充実され、従来の生化学的方法に加えて、細胞生物学的な又分子生物学的なアプローチがとられる事が多くなり、DNA transaction に関わる核内酵素の機能解析が進められていました。2007年(平成19年)4月、東北大学から高沢 伸先生が第4代教授として着任され、REG遺伝子ファミリーの発現と制御、膵β細胞の自己複製、Sleep apnea syndrome(SAS)についての研究が進められました。2023年(令和5年)8月、大阪大学から中村修平先生が第5代教授として着任され、研究室を主宰されています。

歴代教授

昭和22年5月
伊藤 登
昭和48年9月
神谷知弥
ポリADPリボシル化反応、ポリADPR合成酵素の生成、
奈良県立医科大学中央RIの整備
平成8年5月
吉原紘一朗
Poly(ADP-ribose) polymerase (PARP)をはじめとする
DNA transaction に関わる核内酵素の機能解析
平成19年4月
高沢 伸
REG遺伝子ファミリーの発現と制御、膵β細胞の自己複製
Sleep apnea syndrome(SAS)
令和5年8月
中村修平
オートファジー・リソソーム分解系の制御機構解明による老化の理解

これまでの研究概要

1. インスリンの生合成と分泌

糖尿病はインスリンの不足や作用低下により組織に血液中の糖が組織に取り込まれず慢性的に高血糖状態となる病気です。インスリン産生細胞である膵β細胞でのインスリンの生合成と分泌は糖尿病の基盤をなす中心的な問題です。研究室で発見したCD38-cyclic ADP-ribose-ryanodine receptor-Ca2+シグナル伝達系を中心に、ブドウ糖刺激によるインスリンの生合成と分泌の新展開を目指しています。

2. インスリン産生細胞の死と再生

インスリン産生細胞である膵β細胞は免疫異常や種々のラジカルなどにより障害され死に至りますが、その再生は糖尿病の根本的な治療法につながる可能性があります。研究室で見出した再生遺伝子Reg(Regenerating gene)を中心に、Regタンパク質が細胞増殖因子として受容体に作用する「Reg/Reg受容体情報伝達系」の解明や組織の再生の可能性について研究を行っています。

3. 間歇的低酸素の分子生物学

睡眠時無呼吸症候群(Sleep apnea syndrome; SAS)は睡眠中に無呼吸を繰り返す病気で、糖尿病、肥満、高血圧症、動脈硬化症など多くの生活習慣病を合併することが知られています。睡眠時無呼吸により生じる間歇的低酸素(Intermittent hypoxia; IH)が生活習慣病合併に与える影響を分子生物学的に解き明かそうと試みています。これまでに、IHが膵β細胞の機能低下と代償性の増殖、肝細胞のヘパトカインの発現上昇、脂肪細胞のアディポカインの発現上昇,骨格筋細胞のミオカインの発現上昇などを引き起こし、2型糖尿病を合併しやすくなると考えられることを見出してきました。

これまでの研究業績